おまるのふた

自宅の倉庫の入り口に置いていた「おまる」。
誰がしつけるでもなく、急かせるでもなく、ただ、そっと。
そしたらある日、ふたをあけてそっとオシッコしていた息子。
おむつからおまるへ。
動物から人間へ。
進化の過程を目の当たりにしたような。
寝返りした時よりも、お座りした時よりも、ハイハイした時よりも、歩き出した時よりも、爆発的に深いものがそこにあった。
こんなにも素晴らしい感動を、置いておいてくれてありがとう。

浮き足立った2週間。
風に乗って、ご近所さんと一緒に公園中を走り回ったり、お茶したり。
偶然の出会いも、嬉しい知らせも、優しい贈りものも、次から次へと舞い込んで。
桜吹雪の中を、人生のピークかってくらいの幸せの中にいた。

もうメソメソしてらんない。強くたくましく鮮やかに。
ゆっくりゆっくり、ひとつの山、越えていくよ。
家族でなら越えられる。みんなで越えてやる。越えてやるんだから。

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おーい!

春の雨。白っぽい空気の中、靭公園の桜が踏ん張っている。

撮影仕事はとてもとてもうまくいっていて、みんなにたくさんたくさん褒めてもらっている。こんなに褒めてもらっていいんだろうか、って思ってしまうくらい褒めてもらっている33歳の春。やっぱりめちゃくちゃ嬉しい。だけど終わっていくのが寂しい。半年以上続いていた長期の案件がオールアップして、またいつもの”もぬけの殻”状態。またしばらく頂上(リビング)でゆっくりするよ。と言いつつ、ゆっくりしたらしたでこんなでいいんやろう か、と渦巻いてきたりして。

ああ、もう33歳なのに。うずうずまきまき。

3月にはじめたヨガはやめとくことにした。鍼灸した時みたいな感じで、熱が出るのだ。東洋医学の世界でいうところの「好転反応」。1000人に1人くらいはいるそう。身体中の毒素が動いて、一時的に起こる症状。よくは分からないけれど、いまはよくない感じがするので、また時が来たらにしたいと思う。それからは自宅でのストレッチに戻った。NHKの『ためしてガッテン』という番組でやっていた腰痛ストレッチが良いなぁ。重い機材や重い子どもの抱っこで、腰がグタグタなのだけど、そのストレッチをすると1発で効くのだから。

保育園の先生が変わって、1週間と半分が経った。新しい先生が、前の先生は「お休みよ。」とおっしゃるもんだから、子はいつか来るんだと待っているようなのだ。だからわたしは「先生はおうちでお休みしてはるねんよ。」とちょっと詳しめにアレンジした。先生はほんとにちょっと病気なのだ。そしたら子は「かぁか、おーい!ってゆうて。」と言うのだ。わたしが「おーい!」と言ったら、先生がやって来ると思っている。

気づいたら、またチクチクしていた。

手拭きタオルに名前の頭文字を刺繍。それが思いのほか楽しくて、あっちこっちに「た」が溢れてしまっていた。手拭きタオル4枚、お昼寝バスタオル4枚、着替えパンツ6枚の合わせてまた14カ所。直線だけならできる。くるっと回る部分が入っている文字はだめ。「おーい!」の 「お」とか。

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はじまりのチクチク

2歳児クラスへ進級して2日目。朝は毎日先生を探して、”シワ〜〜”と涙を流しているようだが、新しい担当のベテラン先生といつものお友達のいつもの様子を見てなんとか踏ん張っている。その踏ん張りは、無理している感じとはちょっと違う。泣いているのは我が家だけだけど、それでいいと思う。寂しかったり、不安だったり、感じたことを出せるのなら、それでいいと思う。

この数日は、わたしはわたしで踏ん張っていた。進級準備の縫い物。お昼寝用の敷きタオルとして使うバスタオルにゴムを付けたり、手拭きタオルにゴムをつけたり。これまでの縫い物は、母にお願いしたり、お友達の「みしんの子」さんにお願いしたり。有り難き幸せだった。だけど、今回はうっかりがんばってみようと思ってしまったのだった。

まずは新しいバスタオル選びから。ここは迷うことはなく、「今治タオル」。昨年、愛媛での写真ワークショップに講師として呼んで頂いた時に泊まったお宿のタオルが、すべてこの今治タオルだった。その質の高さには本当に感動した。今治タオルというのは1つのメーカーの名前ではなくて、1つのプロジェクト名のようなもの。タオル産地「今治(いまばり)」市で作られたタオルで、さらに厳しい審査を通過したものが「今治タオル」マークが付けられる。赤と青と白の清潔感漂うロゴデザインは、佐藤可士和さん。

とはいえ、ピンからキリまであるのは確かな今治タオル。さまざまな種類があるため、「タオルソムリエ」とやらがいらっしゃるくらい。ほんとは現場に行って確かめたいのだけど、今回はひとまず「メゾンドサンホーキンサンターノ」というホテル仕様のものを選んだ。なるほど、これはいい。届いた瞬間、嬉しくなった。2枚で5000円強。1日1時間半200日くらい使うことを考えるとお安いもの。

針と糸。これはいまだに小学校の時に支給されたお裁縫セットのもの。1980年代の懐かしいグリーンの針山。「みしんの子」さんが作ってくれた優しい服や小物たちを見てはイメージトレーニングして、チクチクスタート。ところが、サンターノはやはりしっかりしていて針が入らず、早速苦戦。早速休憩。土曜日は撮影仕事で西宮を駆け巡って、休む間もなく、またチクチク。日曜日の朝はデータ納品仕事で、昼は子守りで弁天町のコーナンまで出かけてリフレッシュ。そして迫り来る新学期スタートを前に、寝かしつけが終わってからラストスパート。

一針一針、時々指にも刺さりながら(なぜ?)、一針一針。そうしているうちに、不思議と穏やかな気持ちが訪れてきた。心がチクチク痛かった先生とのお別れを、チクチクチクチクと針と糸がどこかへ連れ去って行ってくれている感じがした。いや、違った。先生に頼り過ぎていた自分に気づかされた。仕事と育児と病気と、不安だらけの中で拠り所としていた存在。独り立ちせねばならぬ時が来たのだ。次へ進めるよ。針と糸が、背中を押してくれた。深夜1時、バスタオル8カ所、手拭きタオル4カ所、散歩帽子2カ所、合計14カ所のゴム付けが終わった。

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