午前0時のサンタ

食卓の横の木の下に、サンタはちょっとドキドキしながら置いていった。

起きてこないかな。ラッピング間に合わなかったな。布かけておこうかな。赤い靴下拝借しておこう。こどもに手紙でも書いて入れてやろう。手紙は ローマ字で雰囲気出してやろう。そうだそうだ、カーテン少し開けておこう。ここから入って、ここから出た。よし、OK。

こどもは、寝る前に手紙を書いていた。(すべて母代筆)

〜サンタさんへ
(絵)サンタさんのぼうし
(絵)靴下
(絵)靴
(絵)先生の靴
(絵)しまじろうの靴
あいちゃんの「あ」
よっちゃんの「よ」
京都のばあちゃんの「ま」
奈良のばあちゃんの「か」
ピーパの「み」
(絵)おやま

支離滅裂なようで、緩やかに何かひとつ繋がっているような3歳の手紙。
森のクリスマス会以降、ほんとにサンタがいる気がしてきたわたし。
いけるとこまで、サンタを信じさせてやりたい。というか、一緒に信じたい。

あの日。小3の12月。
近所の女子Aちゃんに「家にいいものあるから見にきていいよ。」と誘いを受けた。放課後Aちゃんと一緒に家に着くと、Aちゃんはいきなり押し入れに登り、天袋の奥の方からごそごそと何かを取り出した。「ほら、これ、サンタのプレゼント。お母さん、ここに隠してるねん。」とAちゃんが大きな包みを高らかに掲げて言った。「え!?」と絶句のわたし。「え?って、あいちゃん、まだサンタ信じてんの?」と笑うAちゃん。「え!?あ、お、か!?え。 あ、、、用事あるし帰るわ。」と一目散にその家を出た。外はまだ明るい、寒さも穏やかな夕刻。あの女子。Aのことがその瞬間から大嫌いになった。サンタはわたしには読めない”ローマ字”の”手紙”を書いてくれたのよ。あれは本当なのよ!何よ!A!Aのアホ!

振り返れば、サンタを信じさせてくれていたそんな”サンタ父”と”サンタ母”と、これでお別れになるという事が決まったことに、怒っていたのだろう。うっすら気づき始めていた時だったから、なおさらセンチメンタルになっていた。いるよね!って言ってほしかった。Aも悪気はなく、なぞなぞの答えを見つけたように「すごいでしょ!わたし!」と言いたかったのだ。ただそこに、Aの中に、センチメンタルがなかった。そこがわたしと違ったんだ。

午前0時。新米サンタは小3まで引き返したりして大忙し。
こどもの事より、Aのことが気になってきた。

Aちゃん、どうしてるかなぁ。クリスマス、おめでとう。

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森でいただいたプレゼント

森の中のクリスマス会のつづき。
美味しいディナーを頂いて、みんなで歌を歌って、そしていよいよプレゼントの時間へ。

最初はneccoさんところのねぇねちゃん。6歳の女の子から。柔らかい羊毛でできたクリスマスリース、そして息子の似顔絵2枚、折りたたみ式のお手紙は弟のもっちゃんから。そしてここには(食べてしまって)写ってない姉弟で作ってくれたクッキー。星とライオン。彼女はこの時間が来ることを今か今かと待ってくれていた。それは最初、プレゼントをもらえるからなんだと思っていたら、ちょっと違った。彼女はもらえること以上に贈ることを待っていたのだった。まだ幼稚園児さんなのに、その想いを出したりひっこめたりしていた姿がとても愛しくてたまらなかった。

2番目は、いつも都会の風を感じさせてくれるシャネルのあやちゃん。赤い靴下の中に、空を見上げるキリンのスノードーム。そしてトラの絵のスタン プ。そして大人用にセレクトしてくれた合わせ茶。小さいけれど小技の効いた何とも絶妙な組み合わせ。雪を降らせては落ちて行く、その様子をじっと見つめる我ら。あたたかすぎて泣けてくる。

3番目はわたし。パンツのゴムのわたし。恥ずかしくて嬉しくて、なんだか焦って床に並べてしまった。ひとりひとりの名前を読んであげたかったのに。ちゃんと目を見て渡したかったのに。6歳のねぇねちゃんみたいになりたかったのに。恥ずかしくて嬉しくて、いっぱいいっぱいだった。

4番目は、海の風。いつものご近所みしんの子さん。頑張り屋さんで負けず嫌いで、朝は誰よりも早く起きて、すでに出る準備をして玄関に立っている。そんな彼女。まさかの力作。ステンドグラスが登場。こども用に首からかけられる3色のもの。それを入れておく黒い巾着袋。大人用に2色のものまで。いつどこでどうやって仕込んでくれていたのだろうか。さらには手づくりのシュトレーン。美味しくてこちらも撮影には全く間に合わなかった。飛び出す折りたたみろうそくは、3歳の娘ちゃんからの力作。炎の明かりに照らされて、ブルーのガラスからはこの夏のあの海が、見えてきた。

5番目は、森の風。主のneccoさん。まだ実は出会ってそんなに長くはないけれど、10年前からこの森を知っていたような気持ちにさせてくれるほんの少し年上の彼女。洋のおもてなしの中に時折、和のおもてなしがミックス。そのバランス感覚にいつも染み入らせてもらっている。そんな彼女からは、布で編み込んだ縄跳び。ゆっくりペースの息子はまだ飛べていないけれど、じっと見つめていたのは持ち手のところにつけてくれた絵とぼんぼり。果実のなった木と、青い馬。大人用には小さな杉の枝と小さな飾り、その花瓶の下に敷く黄色い織り物。ツリーのなかった我が家に、物語を感じる特別なクリスマス空間が、ここに完成した。

一夜明け。飾りながら、写真を撮りながら、背後からは「わぁ、すごいなぁ。」と嬉しそうな息子の声。ちょうど食卓の自分の席の目の前だからか、ひとつひとつをまたゆっくりと確かめていたのだった。

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森の中のクリスマス会

15:30。仕事早帰りに保育園ピックアップ、野菜の直売所とタケウチを経由。
16:30。着いたらもう、そこは別世界。
大阪とか日本とか、地球とかそういうのが吹っ飛んでしまうくらい。

森の主のneccoさんを中心に、みなが完全に鮮やかなクリスマスディナーを整えてくれていたのだった。もう完全に有り難く頂いてしまうことに。

森の中の飾りつけは、そう、飾りとかインテリアとかそういうものではない。細部にまでいろんなものが宿っている生き物。「そこに」「あるもの」。森のこども達までもそんなふうに見えてくる。

息子はわたしと同じ、宿っているものの力をほんのりと感じ取っていた様子。慣れた顔ぶれでもこの日はわたしから片時も離れなかった。それがなんだか分かるから、なるべく横で、なるべくゆっくりとさせてもらった。そんなわたしたちに森のみんなは今日もやっぱり優しかった。そうしていると、窓辺の光の横で「きれい。」とつぶやいていた。

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森のこどもたちへの贈り物

ある日、「なんでウチにはツリーないの?」とボソ〜っとつぶやいた3歳半の息子。しまった。完全に油断していた12月。日々かけずり回っている余白の少ないわたし。そんな折に、森のお家からクリスマス会のお便りが届いた。

“持ち物はこどもたちへのささやかなプレゼント”

何か作ってみようか。こんな思いはじめてのこと。できることは、2つ。名前の頭文字の刺繍と、パンツのゴムでひっかける所を作ること。早速、取材帰りのなんばで機材を担いだまま、「オーガニックコットン」の柔らかいハンドタオルを手にしてみた。来年から 幼稚園に入園する子、進級する子、小学校に入学する子、みんなの顔を思い浮かべて。

「る」と「れ」がちょっと難しくて、何度もやり直しては紙に字を書いて確認して。それも楽しい。普段は固いもの(カメラ)を持って手仕事しているせいか、柔らかいもので何かを作ることへの安らぎ感は果てしなかった。ひっかける所のひもはパンツのゴムでいいんだろうかとふと考えながらも、そんなことはきっとどうでもいいんだったと思いかえしていた。そんなふうに”柔らかいもの”との触れ方を教え続けてくれていたのは、そうかそうだった、森のみんなだったんだ。

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ベレー帽の下で

白髪がちらりほらり。雪景色。
え、っと鏡に固まりながら慌ただしい師走を過ごしています。
仕事はいまミドルの忙しさで、暮らしがラージの忙しさという案配。
みなさま、いかがお過ごしだろうか。

11月24日。土曜日。夜9時。
たくさんのお客様に支えられて、4周年。無事に窓際トークイベント『window』を終わらせて頂いた。ワークとライフとフォト。終わってからは また、穴があったら入りたい症候群に落ち入り(オグラユウジくんとともに)、2人してほんとうにこもっていた次第(いや、オグラユウジくんはちゃ んと仕事に出ていましたが。写真/右)。終日珈琲をドリップし続けていたマツカワくんは、ちょっとだけバリスタ気分ながらもいつもとたいして変わらなかった。来て頂いたお客様にはお尻痛い思いをさせてしまい申し訳ないキモチと、でも私たちの歩んできた15-6年を聞いて頂いたことへの感謝 のキモチで、1ケ月近く経つ今日のこの瞬間にも胸がいっぱいになります。本当にありがとうございました。

この写真は窓際トーク開催数時間前に、お祝いに駆けつけてくれたご近所の友人みしんの子さんがちょっとブレながら撮影してくれた。それくらいが ちょうどいい。来年もまたこうして撮ってもらえるよう精進したい。

暮らしのラージについては、また今度。

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4th

20121210

Tosabori , Osaka / NOVEMBER 2008

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