肋骨どころではなかった

入院していた。

10月中旬から1ケ月続く咳と微熱。
11月15日の撮影で、肋骨に違和感を感じてから半月におよぶ高熱。
それは次第に38度から41度へと跳ね上がり、同時に、首に大きなリンパ腫。
かかりつけ医の紹介で大きな病院へ移り、その中でも内科から血液内科へとセカンドオピニオン。
さらに専門医のいる病院へと移り、結果、緊急入院。12月9日の事だった。

医師からは「38度以上の熱が3週間続くというのは異常。感染症か膠原病、もしくは悪性腫瘍の可能性もある。」と告げられた。事実、膠原病に関連する抗体の数値が高く、間違いなく気楽なレベルの問題ではなかった。

これまで大きな病気も怪我もなく、妊娠中も風邪ひとつひかず頑丈に生きてきていた。
そんな中、この写真家業12年間ではじめて撮影仕事をキャンセルした。

「何かおかしい」を抱えながら気づけば約2ケ月の間、なんとか踏ん張り続けていたが限界はこの私にもやってきたのだった。

第8番目の肋骨はポっきりと折れていた。

それは小さなひとコマ。大きな何か得体の知れない変わり目を感じずにはいられなかった。だからといって芯の部分では驚きでもなかった。粛々と準備を進めた。病院の電話ボックスから、進行中のプロジェクトに関わる方へ電話やメールをする。一緒に作り上げているからこそ、丸ごとそのままお話した。

入院直前まで調整に調整を重ねて挑んでいたのはアートアンドクラフトさんの撮影。新しいマンションリノベーションシステム「TOLA」。担当の植田香さんには「子守りとか何でも手伝えることあったら言って。」とご近所さんならではの有り難いエールを頂いた。「TOLA」のイメージ写真は無事に完成し、サイトに上がった。3年目に突入する神戸女学院大学のパンフレット撮影は、編集者の青山ゆみこさんに電話。「きっとこれは何かのチャンス。しっかりね。」と家族のような包容感。今月末に出版予定の本を製作中の通崎睦美さんには「大丈夫、平野さんは、”はかなく”ないから。」と心強い言葉を頂いた。ちょっと笑ってしまうくらいそのニュアンスが素敵だった。その本は通崎さんの『天使突抜367』という家のリノベーションエッセイ。わたしは昨年3月から撮影を担当し、ついに昨日入稿完了。ぎりぎりまで粘って待って頂いた表紙撮影の様子などもblog [通崎好み製作所] に。

今、こうして書けること。聞いてもらえること。それが本当に嬉しい。
入院中はそれはそれは混沌としていたのだった。
そして、そう、これからの生き方暮らし方はこれまでとは違うものになった。これはこれから少しずつお伝えしてみたい。

長い長い珈琲ブレイクはもうおしまい。

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