レイ・ハラカミさんの音楽

妹から10年間借りっぱなしのCD。
アネさんは、いまも、聴いているよ。
CDデッキに入れて、外ではCDウォークマンに入れて。

多感最前線だった10年前のわたしたち姉妹。
2001年に出会ったCD『red curb』は衝撃的な浮遊感をもたらしてくれた。
テクノ・エレクトロニカ音楽家のレイ・ハラカミさん。
わたしたち姉妹も住まう京都から生まれた音楽だった。
誇らしく、未来を感じ、世界に繋がっていった。
ライブで見たあの姿。
優しく、強く、そして、泣きながら、奏でている、ようだった。

それから10年。
いまも変わらずハラカミサウンドが身体の約半分に染み付いている。
鴨川を見ると、流れに乗ってその音が流れてくる感じまでする。
もうちょっとしたら、宇宙のどこかから流れてくるんじゃないか。

少し、京都に帰りたい。

レイ・ハラカミ(rei harakamiオフィシャルウェブ)
yanokami(矢野顕子さんとレイ・ハラカミさんのユニット)

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夫、ひとり旅に出る

今朝も息子は園の入り口から泣いていた。3連休明けからいろいろ飛ばしても5日間。毎朝30分だけ悲しくなっているそうだ。どうしたんだろう。何なんだろう。と今朝も夫と分析すると同時に、「デンチャ〜デンチャ〜」と息子が訴えはじめた。なるほどそういうことか。俺は電車が見たいんだよ。園のBRIO(木の電車&レール/スウェーデン製のおもちゃ)では満足できないんだよ。俺はとにかく”阪急電車”が見たいんだよ。そんな感じがしてきたのだった。わたしはこころが折れそうになるので、送りは夫。しばらくみなで踏んばりたい。

さて、夫34歳。奈良生まれ。出会いは大学を出た後にさらに通っていたアートスクール。お互い、メディア編集を学んでいた。もう10年くらい前のこと。当時使っていたパソコンがMacBook G3(黒いノートブック)と同じだったことから、頼りにしはじめたのがきっかけだった。28歳で結婚。31歳で写真とプリント社設立。ソウル、ディスコ、ハウス、とくにシカゴ好き。日本語ラップ、ポップミュージック全般好き。隙あらば漫画読みたい、アイス食べたい、レコード買いたい、映画観たい。だけどできない。そんな暇ない。ヨメはん療養。俺、動揺。お風呂。おむつ。着替え。寝かし。家事、仕事。なんでもやるぜ。がんばるぜ。という今日この頃である。

3連休、「ひとり旅に出てもよかろうか。」という申し出を誰が止められようか。いってらっしゃい。どこまでも。行き先は岡山から倉敷、鳥取県、出雲大社、そして米子。ゲゲゲである。予算3万握りしめ、もちろん鈍行列車。学生時代の友人たちの力を借りて移動ありーの、あまりの暑さにTシャツにパンツはコインランドリーで洗いーの、100均でサンバイザー買ーいの、ナチュラクラシカでリクエストしておいた砂浜ひとりポートレイト撮りーの、いきいきとご帰還の34歳だった。

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めくるめくモダンバレエの世界へ

昨日の大阪は暴風警報が午前9時時点でも発令。よって保育園は休園。急遽やってきた二人で過ごせる時間がむしろありがたかった。というのも、三連休明けの園の送り時、かつてないほどの泣きっぷりと「ガァ〜ガァ〜!」と(かぁか行かないでという感じの)すさまじい雄叫びに後ろ髪引かれまくりで、わたし自体がパツンパツンになってしまっていたから。

さて、そんなに泣いてしまうくらい、三連休何がどうだったのか。

場所は1ケ月ぶりの京都。「祇園祭」そしてわたしの妹の「バレエの発表会」、そして「フレンチレストランでのランチ」である。非日常的なめくるめく世界を堪能した2歳児はおそらくかつてないほどの「祭り」だったんじゃなかろうか。

祇園祭やフレンチはともかく、バレエってなにさ。
バレエと言っても妹の所属する「宮脇翠舞踊研究所」は京のモダンバレエ界のパイオニア。クラッシックバレエから派生した、トゥーシューズをはかない新しいステップと創造性を取り入れたバレエである。故・宮脇翠先生は故・石井漠先生(大正時代にヨーロッパやアメリカでモダンダンスの研究を経て日本で広めた先駆者)を師に持ち、独自の創作作品を数々残した京都市芸術功労賞の初代受賞者(昭和50年)。「モダンダンス」や「現代舞踊」などと呼ばれているけれど、その歴史はじわりと古典化し、今回の演目にもあった「希望」「コンチェルト」といったラインナップはもはや文化財。宮脇翠振付バージョンの「ボレロ」や「ラプソディ・イン・ブルー」などもその域に達している。などと”勝手に”思っている。

そんな独特の世界で妹は3歳から紆余曲折を経ながらもかれこれ20数年間、踊り続けている。まったく別の仕事を持ちながら、踊りの創作もしている。それを2歳児は親子ルームという防音室から見ていたのだ。固まりながら、しかししっかりと。そして最後には拍手を。帰りの車の中ではついに手をヒラヒラさせて踊っていた。

そして何を隠そう、このわたしも、このめくるめくモダンバレエワールドで約15年間ステップを刻んでいたというのだから、驚きだ。ラプソディ・イン・ブルーも、そしてボレロも。

話は少し逸れるが、ボレロといえば、モーリス・ベジャールの振付作品が世界的には有名になっている。それがこの秋、100年に1人の逸材と言われるバレエダンサーのシルビィ・ギエムによって復活する。妹はしっかりとチケット2枚を確保し、「アネさん、行こうではないか。」とお誘いの声。病床の淵でチケットゲットなどあきらめていたわたしは、瞬時に飛び上がっていた。祭り再び。舞い上がっているわたしたちを横に一緒に喜ぶ息子だった。

台風のように去っていった、大騒ぎデイズ。
ぽっかり放り出されたら、誰でも泣きたく、なるよね。
園ではあの手この手でなだめて頂き、結局はダンススタジオ(鏡ばりのが地下にできた!)へ踊りに連れられるとともにピタっと落ち着いたとのことだった。

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思いは繋ぐ

昨夜、編集者の青山ゆみこさんから、「大野更紗さんの『困ってるひと』いいです。平野さん励まされるかも」とメールを頂く。青山さんはいつも何か本とわたしを繋げてくださって、入院中もお見舞いに持ってきてくださった『しずく』(西加奈子著)にはゴリっとほぐされた。さすが編集のプロ。私に効く本を知ってなさる。前述の本はさらに上をゆくダイレクトヒットで、今も読みたくて読みたくて仕方がない。ありがたい。

モノと人を繋げてくださることが昨日はもう一つ。毎日新聞朝刊。澤木政輝記者による「ツウザキさんの京都長屋再生術」の連載がスタート。撮影を担当させて頂いた『天使突抜367』(通崎睦美著)をまた違った視点で語りはじめてくださった。わたし撮影のカットも数点掲載。毎月1回、6ケ月続く。次回は8月11日。うれしい。

Emotions create next emotions.
思いは繋ぐ。を胸に、7年間撮影とディレクション&デザインを夫とともに担当させて頂いてきているエスペランサ靴学院のパンフレット(左の写真)とホームページがリニューアルアップした。
7年前って、25歳。学院長がわたしの写真と言葉を見つけてくださったのがはじまりだった。新幹線に乗って東京駅着。八重洲バスターミナルからバスに乗って35分。降り立った場所は浅草の端っこ。東京感ゼロの下町で、何を思ったか。それは「なくしたくない。残したい。」だった。靴作り、靴業界の「現実」を、浅草からはじまり茨城・神戸・姫路・大阪・京都、果てはベルギーのアントワープまで寄り添って見てきた。32歳の今も、変わりない。繋げたい。ただただ繋げたい。次へ。

エスペランサ靴学院(ギャラリーページでは7年間の学院風景写真も/パンフレットは資料請求から)

ツウザキさんの京都長屋再生術(通崎好み制作所blogより)

編集集団140B(青山ゆみこさん所属/青山さんは元MeetsRegional副編集長。現在雑誌『大阪人』などを絶賛編集中)

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素朴な七色スペクトル

今ね、虹でてるよ。

みしんの子さんからのメールでベランダダッシュ。
夫に担がれた息子がグワングワンなりながら、3人で無事に鑑賞タイム。
身体じゅうに溜まっていたモワモワ熱がヒュっと出ていった瞬間だった。

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。

思い返せばこの2ケ月。
虹色の数きっちり分の女性たちが、わたしに会いにきてくれたんだった。
7つの光をちょっとずつもらっていたんだろうか。そんな気がしてきた。

「赤」ははじまり。仕事先のディレクターさんの奥さんだった。
涙をホロホロ流して、わたしの病気の辛さと痛みを感じてくれた。
「橙」はそう。画家の彼女。わたしを元気づけるために絵手紙はいつも橙。
満を持して今度は自ら小さな絵を持ってやってきてくれた。
「黄」はね。靴職人の彼女。ストイックな彼女もまた区切りの時期。
これから進めの青。その手にはすでに魔法の筋肉がついていた。
「緑」はこんにちは。OLさんの彼女。わたしのblogの大事な読者。
客観的な視点が新鮮だった。公園の緑の下でドーナツ食べたね。
「青」はいつもの。みしんの子さん。いつだって繋がってるんだ。
空みたいに。青い空を見ると安心する。休む力と進む力をくれたね。
「藍」はひろがる。世界ではじめての母友さん。いつだって笑顔。
いつだって飛んできて包み込んでくれる。食料と元気を持って。
「紫」のさいごは夢の中。世界ではじめてのもう1人の母友さん。
大阪から千葉そして東京に引っ越した。また会おうねと言ったんだ。

写真に写る素朴なその虹は、しばらくずっと、消えなかった。
来てくれてありがとう。ありがとう。

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