深呼吸

くったくたでございます。

ありがたきことに毎日撮影撮影。
団地の本作りに参戦中。
春に撮影した団地座談会もアグレッシブでよかった。
休憩と休憩の間に撮影撮影。
ガーっと行って、バンってなるからね。
あぶないあぶない、それでもまたガンガン走っているよ。
止まって止まってと声をかけてもらいながら、なんとか深呼吸。

あぁ、深呼吸ってめんどくさい。

ここは団地の中の集会所。
いるひとみんな汗まみれの。
汗が一周して乾燥すると、Tシャツは元にもどるのだね。
壁作り床作り棚作りを見つめながら、これからの暮らしを考える。

ワークとライフのバランス。あぁ、難しい!保育園のお迎えに走る自転車の上で、泣きそうになる。しんどいを20回くらい垂れ流していたな。こんな時、前ならすぐに夫や母に電話してヘルプサイン出してたな。でも出してないな。あ、日曜日は夫も仕事で、丸一日母に来てもらっていたな。今日はどうかな。大丈夫かな。

今日明日、夫は東京。わたしはいまから京都の丹波橋。作家さんのアトリエ撮影。鼻息ブンブンで行くよ。そうして、きっとまた夕方自転車の上でいろいろ垂れ流すよ。

いってきます。

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森の家へ

保育園のプールに入れるまでに3週間。お絵描きも紙粘土も手を出せるまで1週間。お久しぶりのお友達の家でお友達に慣れるまで1時間。何かと牛歩の我が子を連れての日々は、今日もアクティブに続いている。抱っこから地上へも定着してきたし、牛歩かと思いきや、時々ハヤブサのフェイントも挟み込んでくる3歳1ケ月の陽気な夏。

これは少し前のある日のお話。そんなわたしたちの色味をよくよく知ってくれているみしんの子さんが、満を持して連れ出してくれたのが、ここ。大阪西区の向こうの方にある、ひとつのお家だった。たくさんの植物が、茶色の一軒家の内と外をあらゆる角度から包み込む。乾いた植物も湿った植物も、花のあるものもないものも、それらはいろんな命を持って。まるで森の中。時々射し込む光は、木漏れ日のよう。

森の家の主は、先日”森の中の誕生日会”ではじめて出会ったneccoさん。美容事にもう15年ほど携わりながら、6歳と3歳の姉弟の育児とさらにはバックや洋服などの手仕事までを全力で駆け巡るお母さん。夕食作りはあっと言う間で、テーブルは野菜のお料理で埋め尽くされ、絶え間なくソーダにお茶に珈琲がサーブされ、おやつは手づくりのパン、お風呂遊びに花火までさくさくと。そのおもてなしの技の多さ、そのパワフルさに初めは熱吹き出るほどに圧倒されて(本当に熱出た)、心臓がドキドキ。森の家の中で育った姉弟の、野性味あふれる動きにも、目が点に(写真左が 森の家の可愛いい男の子。パンツ…)。

仕事と、家事と、子育てと。それに加えて手仕事と。
そうした暮らし作りへのはエネルギーは一体どこから湧き出てくるの?

と、台所で自家製の梅ジュースを入れてくれている彼女に思わず聞いてみた。しかし彼女はフフフと笑いながら森の中に隠れてしまうように、「そうでもないよ。」と言うだけだった。そんな彼女の後ろ姿。その肩にはサロンパス2枚が寝転んでいた。森の中の素敵な主の肩にベージュ色のサロンパス2枚が、ハの時で並んでいるのである。最高に魅力的。お洒落でかっこよくて素敵で、それでいてちょっと泣ける部分がこぼれ落ちているんだから。

森の家の姉弟もまた、そんな魅力をたっぷり染み込ませている。野性味溢れる勢いの中に、時折見せてくれる繊細な心の動き。何かと時間のかかる息子の横に、何も言わずそっと横に居てくれる弟くん。大切な木のおもちゃをじっくり触らせてくれるねぇねちゃん。子どもが子どもを待っていてくれる。 なんと幸せな風景。森の家に集まった子どもたちは、そうしていつの間にか互いに安心感を得て馴染んでいくものがあった。その時、家の木々が動いたようにさえ思えたのだった。

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大人のかき氷

8日間の夏休みに入った。

先週はここ一番の大きなコンペなどを経て、今は気が抜け切っている。とはいえ、休み明けからは、この冬出版予定の本の撮影担当がスタート。それに向けて、カメラ機材の調整に入ったりしている。これがまた大変。現在のメインカメラの1つはCONTAX RTS IIIというフィルムカメラなのだけれど、これがちょっとだけ使いにくい部分がある。それを昔なら別の部品で一発で解決するところ、現在その部品ひとつ手に入れるのが極めて難しいことになっている。それはもう、もだえるくらい。悩み苦しんだ末に、その部品が入った状態の同じボディをもう一台買うことに決めた。 もちろん中古(メーカーの京セラは2005年9月で撤退)。

中古で、はいどうぞ、というほどすぐによいものがあるわけではないのがまた苦しいところなのだけれど、これがどうも運良く「大林カメラ」(大阪第 一ビル1F)で出会うことになった。この日は、レンズの修理(10数年使い続けてきたカールツァイスプラナー50mmF1.4に、めったにない内部でのくもりが発生したため…)に大急ぎで阪神百貨店8F「カメラ修理コーナー(江守商店)」に駆け込んだ日だった。江守さんの丁寧な説明を聞きながら、その修理代金1万2千円と修理期間2週間、そして何より”くもりが晴れる”か開けてみないと分からないとの事にクラっと来た。間に合わない。レンズももう1本買うしかない。修理は修理でお願いすることにし、その足で「大林カメラ」へと向かった。向いながら、江守さんのワイシャツがピシっとしていたのが、さすが百貨店とキモチの良いものを感じた事を思い返していた。

カメラ店に到着するとショーウィンドウにはわたしを待っていてくれたかのように、思っていたRTSがピシっと飾られていた。目の合った白髪紳士な店員さんに声をかけて、そのRTSと裏から出してきてもらったこれまた美しいプラナー50mmレンズを5分で即決。そのスピードには白髪紳士はクールにビビっていたに違いない。最後の最後で名刺を渡された。「10年前までわたしはCONTAXユーザーでした。いいカメラです。どうぞ長く使ってください。」 と。

10年前とはすなわちデジタル移行期。白髪紳士はその時、車1台買えるほどのCONTAXコレクションをすべて手放したそうだ。

ずっしりと重いカメラとレンズをリュックサックに入れると、急に身体中が熱くなり、喉はカラカラになった。

そうして駆け込んだのがご近所再びのcocoo cafeさん。それが、これ。「ティエスプレッソかき氷(ミルクかけ)」(650円)。注文して食べること自体、20年ぶり。 氷とかアイスクリームにあまり惹かれてこなかったのは、冷たいから。いやいやしかし、ここのかき氷は間違いなかった。手回しのかき氷機で作るかき氷。冷たいけど、冷たくない。痛くない。優しくて、柔らかかった。

フィルムカメラ、まだまだいける。
修理してくれる人も、売ってくれる人も、まだまだいてくれる。
仕事場では、1枚1枚焼いてくれる人が、力強くいてくれる。
人の手をいっぱいいっぱい通過した写真を、尽き果てるまで頑張りたい。
氷の山をつつきながら、そう思ったのだった。

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AUTTAAのタップシューズ

東京で革小物の制作を続けておられるAUTTAA(アウッタ)のおふたりが大阪に。

「甘くない手づくり品」というイカしたコンセプトに2010年から惹き付けられ、ついに念願の靴をオーダーさせてもらった。AUTTAAの定番シューズから新作までどれも見応えたっぷりの中、選んだのは「KUDO(クーズー)」という野生動物の革を使ったタップシューズ。野生というだけあって、傷や風合いもまちまち。その荒々しい強さに少し怖さを感じつつも、AUTTAAさんの絶妙なデザインセンスで、なんともいえない安定と繊細を得る不思議な靴。サイズ38のベージュ。仕上がりはこの秋、11月。嬉しい。

今回の大阪での展示は阿倍野の「dora(ドラ)」さんという、レトロなビルをリフォームされたショップ・ギャラリー・工房。下町の中にある異空間。AUTTAAの世界観がうまくいかされたかっこいい受注展示会だった。靴だけでなく、革バックやデジカメケース、人気のエンベロープケース(靴と合わせて、イエローのケースをひとつ持つことに)なども。大阪での展示は本日8月10日(金)まで。ひきつづき東京と北海道へと巡られる。

今年の秋冬はこの靴を履いて、荒々しく走り去ってみたい。誰かの前を。

※写真は許可を得て撮影させて頂きました。

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三輪車の周辺と近況

住居の1階をカフェに改装中のご近所さんを覗き込んでいたら、三輪車を頂いた。その日以降、夕暮れ時は三輪車一色となった。

保育園から帰ってからの1時間が黄金の三輪タイム。
まだうまく漕げないため、後ろのバーで操作してやりながらの散走。
郵便ポスト、電話ボックス、ネジのショーウィンドウ。
停車ポイントも決まり出す。
この蒸し暑い最中、頭には自らすすんでヘルメットをかぶる男。それには映画監督のスタンリー・キューブリックを思い出してしかたない。『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』を産み出したキューブリックは、自家用車のポルシェに乗る時、アメフトのヘルメットをかぶって運転するという伝説がある。いつかどこかで見た映像と、今がクロスする。

夕暮れ時とはいえ、やはり暑いのである。お互いに。そうしてこのところわたしも子も順に発熱していた。39℃を一瞬通過して、1日2日で回復。わたしは約1年ぶりの高熱で、ドキリとしたけれど、体力と免疫力の復活を実感することにもなった。2回目の入退院以降、周囲のサポートと病院の定期的なサポートを得て、確実に身体が整ってきている。投薬もなくなり、辛い副作用や後遺症もほぼなくなった。有り難き幸せ。とはいえ、まだまだ油断大敵。今日は秋からのワークショップの会議。明日はコンペ。水分と”ほどほど”で、この夏を乗り越えたい。

ヘルメットの3歳児は、日に日に個が際立ってきているのが今日この頃。

3週間前に始まった園でのプールには、「昨日」初めて入水。それまで頑なに、服のまま靴をかかえて、少し離れたところから全体を眺め続けていたらしい。ベテラン保育士さんも唸る手強さ。桶に足を浸けてみたり、ペットボトルで植物に水をやってみたり、ゼリーカップで水をすくってみたり。家では湯船に10cmくらい水を入れてみたり、お湯を入れてみたり、プールバックには車のシールを貼ってみたり、水着に名前の「た」を縫い付けてみたり、お友達の家ではビニールプールを出してもらったりと、まさに試行錯誤していた。それでも入らなかった。そんな中、誰も期待していなかった昨日、突然自ら水着に着替え、大きなプールの中でワニ歩きをしたというのだ。何があったんだろうか。それは先生さえも、分からなかったようだ。何だか分からないけれど、何かが吹っ切れたんだろうと、先生はその喜びをデジタルカメラに記録してくださっていた。先生の写真はちょっと震えていたのだった。いい写真だった。

この弱々しい小さな時代に、じっと待ってくれる、守ってくれる大人たちに囲まれること。ささやかな集団行動の中にも、そっと余白の部分があること。それらを感じ受け止めることで、人は人を信じて、自分を信じて、前に進んでいくことができるんだろう。

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