この日この時の肖像画を

10月28日。日曜日の松山。曇り時々雨のち晴れ。

伊丹空港から今年もあのプロペラ機に乗って行ってきました。
KLASSEポートレイトワークショップ Days and Colors @愛媛県立美術館vol.2 へ。
KLASSEとは、FUJIFILME製の高級コンパクトフィルムカメラ。デジタル満載のこの時代に、現行で生産されている唯一のコンパクトフィルムカメラ。わたしはこのカメラと4年前に出会えたから、日々が撮れるようになって、こうしてblogをはじめることができて、暮らしが変わった。ただそれだけなのだけれど、そこから何かを伝えたかった。そんな想いを感じ取ってくださった松山の写真店「南海カメラ」さんが今年もまた呼び寄せてくださった。

昨年は子と夫と一緒(ワークショップ中は別行動)だったのだけれど、今年は子(3歳)と一緒に飛行機乗ることだけでもハードボイルド過ぎるので、一人旅とさせて頂いた。おかげで前日入りの夜は南海カメラ店主のユミさんと、縁あって再会できた学生時代の友人で地元住民の絵描きの彼と食事会。新鮮な瀬戸内の魚介類をたくさん頂き、さらにはわたしのリクエストで美味しい珈琲のあるお店「カフェ ニュー クラシック」にも連れて行ってもらい大人のひとときを。絵描きの彼の変わらぬ柔らかい物腰と的確な一言一言にも力をもらう。家のことなどすっかり忘れて、松山の空気感を身体いっぱいに準備させてもらうことができた。(という最後の最後で携帯に着信。深夜まで起きて踏ん張っている子からまさかの「帰ってきて」コール。「帰れないよ。飛行機飛んでないよ。朝になったら写真の先生して、夜になったら飛行機乗って帰るからね。」×5。)

参加者の中にはウチよりも小さなお子さんを預けてここまで来てくださったり、遠く高知から車を走らせ来てくださったり、5歳の娘さんの写真を撮りたいからとお父さんが来てくださったり。いろんな方がいろんな毎日を抱えて、それでもここに何かを得に来てくださっているという事。「もうそれだけで、OK。もうここへ到着できているだけで、大丈夫。”写真”はちゃんとはじまっています。」という言葉からワークショップをスタートした。

今年はとにかく、瀬戸内海の穏やかなイメージでゆっくりゆっくり話すこと。見せること。を意識した。そしたらなんともあたたかい参加者のみなさんの眼差しに包まれてる気持ちになった。そしたらなんだか感動してきて、作例写真を見てもらううちに涙が出てきてしまったのだった。我慢したけど、我慢できなかった。その写真はこの前、この日のために撮り下ろした親子の写真。お母さんと娘。毎日毎日ふたりが通い続けている公園。その公園でふたりの肖像画を撮りたかった。どんな風に撮ろうか、公園全体を撮った写真からじわっと寄っていく写真。そうか、これだ。と、 最後に撮った写真はお母さんと娘のすり切れた膝小僧の写真だった。毎日毎日連れて、遊んで、ころんで、膝ついて、布で補強して、そうして今日もまたあの公園に。親子の積み重なる毎日が、楽しい時もあれば辛い時もある毎日が、この日この時、みなに見てもらえることで想い描いていた肖像画になった気がしたのだった。

参加者のみなさん、目が点になっていたに違いない。
でもでもきっと優しい優しい、点。
だからかな、みなの撮るポートレイトの良かったこと!
KLASSEと人と、その場の光をみな、色とりどりに自分のものにできていた。

大丈夫、もうみんないつだって、撮れるはず。

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