フィルム写真は優しいパンの味

「APPLEの発音」というパン屋さんの食パン。名は「山は歌う」。

この夏初めて出会った、最高に優しく染み染み染み染み身体に来るお味。
この感じって、この感じって。何だったけ。何だったけ。
と、問いかけながら頂いて、頂いて、頂いて、はっとした。
フィルム写真の感じだわ。

カメラといえば、デジタルカメラが主流となっている中、わたしの仕事の8割9割はずっと変わらずフィルムカメラ。日常ではblogのdays以外は、デジタルカメラをほとんど使っていない。プリントラボも身近に作って、いつまでこんなにアナログで幸せな日々を続けられるんだろうと、少し不安になる時もあったけれど、”終わりのその日”が来るまで(例えばフィルムの生産が終了するとか)恐れず真っ直ぐ突き進もうと決めたのだった。だから、初めてのお仕事先などには「フィルム写真がメインです。」と包み隠さず言う。「それでもどうにかデジタルで。」と包み隠さず頼んでくれるお仕事にはできる限りお答えしたい。ここのところもそうだった。だけども、やっぱりデジタルは難しくって変な汗が出た。その場で見れてしまえる事とか、たくさん撮れてしまえる事とか、普段焼いてもらう色ではないという事とか、シャッター音とか、ボディの重さとか、形とか、全てにおいて、難しい。ピッタリくる日もあるのだけれど、ほとんどない。身体への染み染み度数が、フィルムの世界に比べて圧倒的に足りてないからだろう。フィルムが地球なら、デジタルは宇宙みたいなイメージ。限りある世界と、果てしなく続く世界。

そんな事だから、先日とんでもない事が起こってしまった。久々にも程があるくらい久々にデジタル写真でのお仕事先に、間違えてフィルムを持って行ってしまったのだ。つまり、メモリーカードを完全に忘れたということ。幸いにも待ち合わせ時間の30分前に着いていたので、猛ダッシュで近くのスーパーで写真店を見つけて4GのSDカードを購入した。そして何事もなかったかのように、そのまま涼しい顔で「おはようございま〜す。」と合流したのだった。「アウトかセーフかというと、アウトやな。」とその夜、夫に言われてしまった。まさにその通り。背筋が凍る出来事だった。

世の中にはパン派の人もいればごはん派の人もいるように、写真家やカメラマンにもフィルム派もいればデジタル派もいて、どっちも派の人もいる。それは身体がそう答えているのだ。だから、どちらがいいも悪いもなくて、どちらのお味が身体に染み染み来るかで、決めたらいい。そのお味にさえ、感じていられれば。

APPLEの発音(店主の青木さんがひとりで丁寧に丁寧に作られている大阪の平野区にあるお店。パンにはひとつひとつお話がついている。)
Days and Colors(2011年10月23日に講師を勤める、高級フィルムコンパクトカメラKLASSEのワークショップ。カメラの貸し出しもあり、撮った写真はその日に鑑賞できる。染み染みDAY。)

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