しっとり緑色の松山帰りより

コンパクトフィルムカメラKLASSEを使ったはじめてのワークショップ「Days and Colors」の松山から帰ってきた。轟音のプロペラ機に帰りも固まりながら、電気が消えるたびに泣きそうになる息子をなんとか落ち着かせ、這々の体で。そして息子を夫に丸投げして、わたし12時間爆睡。もぬけの殻。余韻覚めやらずあっと言う間に5日が経った。その間、ほぼ毎日一日1時間から2時間のペースで撮影仕事に出ながらも、年に一度の保育園「お弁当の日」が挟み込まれていて、これが山場だった。もぬけていられない。9時登園に間に合うように、7時に起きて(実際には緊張で5時くらいから目が醒めて布団の中で固まっていた)、炊きあがった白ご飯の上に味海苔で車の切り絵を描いているだけでいっぱいいっぱい。本当は絵本『ピンポンバス』のバスがよかったのにうまくできなくて、電車みたいになったりケーブルカーみたいになったり。だんだん嫌になってきて結局車で落ち着いたのだった。その日の連絡帳には先生から「車の絵を見てわたしが先に喜んでしまいました。愛情たっぷりだなぁと嬉しくなったんです。」などと書いてくださっていて、赤面。感動してしまうから駄目駄目。お弁当って、だから、なんだか恥ずかしい。

振り返れば、いまも松山のひとときが蘇ってくる。

雨上がりのあたたかい瀬戸内温暖気候の松山。しっとりとした色に染まる風景。場所は県庁などがある地域の中の愛媛県美術館。その中の一室、大人テイストの座席とスクリーン完備の研修室。マイクあり、プロジェクターあり、スクリーンあり、投影あり。当日は館前の広大な広場で松山の物産博が開催されていて、友近さんや嘉門達夫さんなどがゲストに。なんとも言えない大盛り上がりの(現地人曰く、松山人のほとんどがここに集まってる)そんな環境での朝10時から夕方5時までの染み染み(しみしみ)dayだった。

参加者のみなさんは愛媛県人の20代と30代。温暖気候そのもののような、温和でゆっくりとした時間の中にいるような方たちばかり。スタッフのみなのムードも心地よく、こちらの緊張もすぐに解けて、不思議な優しい袋に入ったような気分で進めていくことができた。撮影タイムは4名1チームで動いてもらうことになった。最初からドライブ入っているチーム、なかなか動きだせないもじもじチーム、汗をぷっぷとかきながらトライしているチーム、遠くまで行って全然見当たらないチーム、ゆっくり考えながら一カ所でがんばるチーム。どのチームも自然な個性が生まれていて、見ていてとにかく面白かった。左の写真の女の子がいたのは、そう、もじもじチーム。女の子3人と男の子1人。はじめて同士なのだから、とっても普通のこと。この石畳がなんだかいいよね、ちょっと立ってみて。ときっかけを提供すると、あっと言う間にみなテンションがあがり、撮る方も撮られる方も動きはじめていったのだった。そうして一人一本ずつ撮った写真は最後にプリントとなって、みなの手に。1枚1枚セレクトしては展示していく姿は真剣そのもの。インタビュー形式で一人一人にマイクを向けると、みな振り絞って語ってくれた。その過程に立ち会えたことが本当に嬉しい。自分も、はじめてカメラを持った17歳の頃に戻れたような。

今回のみなのプリントを約1時間半という驚異的なスピードで仕上げてくださったのが、主催者でもある南海カメラの宇都宮由美さん。高校生の息子さんを持つプリントウーマン。このワークショップに向けて、何度もColorsの調整をしてきたことでお互いの歩調はきっとすっきり合っていたんだろう。宇都宮さんのプリントは楽しく歌っていた。最後に握手をしたら、宇都宮さんの手は細く柔らかかった。この手で、この街のフィルム写真が少しでも多く、長く、残っていってほしい。そんなキモチが深々とこみ上げてきたのだった。

また戻ってきたい。一層好きになった松山に。

南海カメラ(この季節、お店にはなんとみかんが素敵に常備。主催してくださった皆様、お助けくださった皆様、KLASSEと出会ってみようと思ってくださった皆様、本当にありがとうございました。)
Days and Colors Vol.2(NEWサイトオープン。第2弾は2011年11月23日。大阪・京町堀のリノベーション建築会社Arts&Craftsさんとのコラボ企画。テーマは再びポートレイト。参加者募集中。)
FLAT-FIELD.NET(TOPイメージ更新)

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