<失われた島への到着の仕方>

3/17。西宮での撮影仕事を完走してから、年に数回の一人夜タイム。

美術作家かなもりゆうこさんの「Memoriae メモリエ」展へ。
この日、最終日。難波ど真ん中のザワザワ感も忘れてしまいそうな「A.I.R1963」という名のレトロビル3F。ギャラリーほそかわ。

白い木のドアをそっと開けると、そこには繊細で緻密で、それでいて、優しくて柔らかな風のような作品がそっと置かれていた。かなもりさんの作品に出会う時は、いつも自然と「そっと」なる。この「そっと」にこの日も出会いに行ったような。

18:00ギャラリーは一旦クローズ。その後、特別パフォーマンス<失われた島への到着の仕方>が開かれた。構成と演出かなもりさん。出演は納谷衣美さん。受付での精算から、着席、お菓子と飲み物のおもてなし。手づくりのクッキーと修道院製のゴーフレット。ワインが飲めないわたしは透明のサイダーにレモンと角砂糖の入った美しいレモンスカッシュを頂いた。そのひとつひとつのパーツも、かなもりさんのパフォーマンス作品。そして、 そっとはじまった。納谷さんの動きは日常のしぐさや行動など、誰もが知っているようなもの。そのどれもが、作品や空間に調和している。紙や布や枝は納谷さんの手でそっと置かれるだけで、たちまち自然界の風景と化す。

「見立て」という言葉がある。「物を本来あるべき姿ではなく、別の物として見る」という物の見方。それを凝縮した世界に例えばお茶室や日本庭園などがあるけれど、かなもりゆうこさんの世界もまたしかり。何を何に見立てるのか。そのセレクトの確かさと美しさが、ものを言う。「この古いチェコ語の本を開けたところに<海>があったんですよ。」と、かなもりさん。そこに、銀色の折り紙で折られた小さな二艘の舟が乗せられていた。海が確かにそこに、あったのだった。

※パフォーマンス終了後、許可をいただいて作品の一部を撮影させて頂きました。

20120317.jpg

Archives by Month