家出
それもダサいことに、普通に「行ってくるわ。」と言ってから。しかも、家出先の京都の実家には半月前から「夕方京都入りします。一泊します。」と連絡済み。つまり、前々からこの日は決まってた。なんというタイミングの良さというか、悪さ。
予定通り子どものリクエストに応えてサンダーバードに飛び乗り、翌朝は市バスにまたも飛び乗り京都市動物園へ。実家の父母は仕事で不在。母子で平日の動物園というのが、”訳あり感”満載でそれだけが妙に満足だった。
園内では300円のレンタルカートを押さされ、ひとつひとつ着いたら降りての繰り返し。着いたら着いたで、キリンはグタっとしてるし、ライオンは寝てるし、ペンギンは臭いし、ロバも臭い。「ふれあい時間」というコーナーにたまたま居合わせれば、あれよあれよという間に飼育員さんに誘導され、気づけばエプロンして「てんじくねずみ」を抱いていた。いや、抱かされていた。気持ち悪くて放り投げたい。だけどそんな事したら親として悪だし、大人として悪だし。さらには、“訳あり母子”をどうにか元気付けようとする飼育員さんたちが優しい声で「命がありますよ。生きてますよ。あったかいですね。」と語りかけてくださるし。なんだかもう、色々ひっくるめて泣きたくなった。怒りに満ちていたマンゴー事件から、放り投げたいネズミまで。気づけば、飼育員さんの愛が本物過ぎて感動してきて、写真まで撮ってもらってた。子は横で、固まっていたけれど。
クライマックスには、「ニシゴリラ」がこっちを向いて座っていた。何もかも吹っ切れてしまうくらいの迫力。子はゴリラに向かって必死に自分の胸をたたいて「これして〜。」とガラス越しに要望。それをまぁ、見事にシラ〜〜っと見返してくるゴリラに感無量。
小さな檻の中で、いろいろ言いたいこともあろうに。しかしまぁそれなりに幸せなんだろう動物たちを見て、すっかり気分も上がり、最後は200円で回ってくれる小さな汽車に付き合ってやった。
ダサい家出だったけど、楽しかった。
ネズミもゴリラもみんな生きていた。
帰ろうか。