三輪車の周辺と近況

住居の1階をカフェに改装中のご近所さんを覗き込んでいたら、三輪車を頂いた。その日以降、夕暮れ時は三輪車一色となった。

保育園から帰ってからの1時間が黄金の三輪タイム。
まだうまく漕げないため、後ろのバーで操作してやりながらの散走。
郵便ポスト、電話ボックス、ネジのショーウィンドウ。
停車ポイントも決まり出す。
この蒸し暑い最中、頭には自らすすんでヘルメットをかぶる男。それには映画監督のスタンリー・キューブリックを思い出してしかたない。『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』を産み出したキューブリックは、自家用車のポルシェに乗る時、アメフトのヘルメットをかぶって運転するという伝説がある。いつかどこかで見た映像と、今がクロスする。

夕暮れ時とはいえ、やはり暑いのである。お互いに。そうしてこのところわたしも子も順に発熱していた。39℃を一瞬通過して、1日2日で回復。わたしは約1年ぶりの高熱で、ドキリとしたけれど、体力と免疫力の復活を実感することにもなった。2回目の入退院以降、周囲のサポートと病院の定期的なサポートを得て、確実に身体が整ってきている。投薬もなくなり、辛い副作用や後遺症もほぼなくなった。有り難き幸せ。とはいえ、まだまだ油断大敵。今日は秋からのワークショップの会議。明日はコンペ。水分と”ほどほど”で、この夏を乗り越えたい。

ヘルメットの3歳児は、日に日に個が際立ってきているのが今日この頃。

3週間前に始まった園でのプールには、「昨日」初めて入水。それまで頑なに、服のまま靴をかかえて、少し離れたところから全体を眺め続けていたらしい。ベテラン保育士さんも唸る手強さ。桶に足を浸けてみたり、ペットボトルで植物に水をやってみたり、ゼリーカップで水をすくってみたり。家では湯船に10cmくらい水を入れてみたり、お湯を入れてみたり、プールバックには車のシールを貼ってみたり、水着に名前の「た」を縫い付けてみたり、お友達の家ではビニールプールを出してもらったりと、まさに試行錯誤していた。それでも入らなかった。そんな中、誰も期待していなかった昨日、突然自ら水着に着替え、大きなプールの中でワニ歩きをしたというのだ。何があったんだろうか。それは先生さえも、分からなかったようだ。何だか分からないけれど、何かが吹っ切れたんだろうと、先生はその喜びをデジタルカメラに記録してくださっていた。先生の写真はちょっと震えていたのだった。いい写真だった。

この弱々しい小さな時代に、じっと待ってくれる、守ってくれる大人たちに囲まれること。ささやかな集団行動の中にも、そっと余白の部分があること。それらを感じ受け止めることで、人は人を信じて、自分を信じて、前に進んでいくことができるんだろう。

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