大人のかき氷

8日間の夏休みに入った。

先週はここ一番の大きなコンペなどを経て、今は気が抜け切っている。とはいえ、休み明けからは、この冬出版予定の本の撮影担当がスタート。それに向けて、カメラ機材の調整に入ったりしている。これがまた大変。現在のメインカメラの1つはCONTAX RTS IIIというフィルムカメラなのだけれど、これがちょっとだけ使いにくい部分がある。それを昔なら別の部品で一発で解決するところ、現在その部品ひとつ手に入れるのが極めて難しいことになっている。それはもう、もだえるくらい。悩み苦しんだ末に、その部品が入った状態の同じボディをもう一台買うことに決めた。 もちろん中古(メーカーの京セラは2005年9月で撤退)。

中古で、はいどうぞ、というほどすぐによいものがあるわけではないのがまた苦しいところなのだけれど、これがどうも運良く「大林カメラ」(大阪第 一ビル1F)で出会うことになった。この日は、レンズの修理(10数年使い続けてきたカールツァイスプラナー50mmF1.4に、めったにない内部でのくもりが発生したため…)に大急ぎで阪神百貨店8F「カメラ修理コーナー(江守商店)」に駆け込んだ日だった。江守さんの丁寧な説明を聞きながら、その修理代金1万2千円と修理期間2週間、そして何より”くもりが晴れる”か開けてみないと分からないとの事にクラっと来た。間に合わない。レンズももう1本買うしかない。修理は修理でお願いすることにし、その足で「大林カメラ」へと向かった。向いながら、江守さんのワイシャツがピシっとしていたのが、さすが百貨店とキモチの良いものを感じた事を思い返していた。

カメラ店に到着するとショーウィンドウにはわたしを待っていてくれたかのように、思っていたRTSがピシっと飾られていた。目の合った白髪紳士な店員さんに声をかけて、そのRTSと裏から出してきてもらったこれまた美しいプラナー50mmレンズを5分で即決。そのスピードには白髪紳士はクールにビビっていたに違いない。最後の最後で名刺を渡された。「10年前までわたしはCONTAXユーザーでした。いいカメラです。どうぞ長く使ってください。」 と。

10年前とはすなわちデジタル移行期。白髪紳士はその時、車1台買えるほどのCONTAXコレクションをすべて手放したそうだ。

ずっしりと重いカメラとレンズをリュックサックに入れると、急に身体中が熱くなり、喉はカラカラになった。

そうして駆け込んだのがご近所再びのcocoo cafeさん。それが、これ。「ティエスプレッソかき氷(ミルクかけ)」(650円)。注文して食べること自体、20年ぶり。 氷とかアイスクリームにあまり惹かれてこなかったのは、冷たいから。いやいやしかし、ここのかき氷は間違いなかった。手回しのかき氷機で作るかき氷。冷たいけど、冷たくない。痛くない。優しくて、柔らかかった。

フィルムカメラ、まだまだいける。
修理してくれる人も、売ってくれる人も、まだまだいてくれる。
仕事場では、1枚1枚焼いてくれる人が、力強くいてくれる。
人の手をいっぱいいっぱい通過した写真を、尽き果てるまで頑張りたい。
氷の山をつつきながら、そう思ったのだった。

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