仕事場のカタチ、オープンラボ

今日、”ついに”わたしのデスクがなくなった。

現場仕事ばかりの毎日。移動移動で、直行直帰でないとすべてが間に合わない毎日。フィルム写真は仕事場のラボでオグラユウジくんにすべて仕上げてもらい、デジタル写真は最新のMac Book Proを”ついに”買って移動先や深夜の自宅で作業をする。このカタチにようやく心が決まった瞬間だった。

仕事場にデスクがあること。その安心感は確かに大きかった。行けなくても待っていてくれる場所がある。わたしの居場所がある。そんなふうに思う反面、行けないことに後ろめたさとか、できていない感、果てには居場所がなくなる感にも苛まれた4年間だった。その間、自分の想いをぶつけたり、相談したり、考えたり、また悩んだり、苦しんだり、涙したりしながら。

3人でじわりじわりと歩を進め、そうして導き出してきた1つの答えが、「オープンラボ」だった。

開業当初からこれまで、我々の仕事場は40平米ほどの四角いスペースを対角線状に分割。すると三角が2つできることによって、右をオフィス (+ラボ)。左をお店(+スタジオ)という間取りにしてきた。間仕切りは可動式の収納棚を使って。そんなオフィススペースとお店スペースの境界線を、じんわりなくしていこうというのがこのオープンラボ計画。お店に現像を出しに来てくださるお客様も、ときどきひょっこりMac Bookを持って川を見ながら作業をしているわたしも、気づけば隣にいたよね。という空間。そのカタチに、3人の気持ちが”ついに”並んで動き出した。ついにというのは、この計画、実は3年前くらいから浮かびはじめていたことだから。だけども、「いやまだ早い」「いやもうちょっと」「いやもうそろそろ」と。それぞれ色とりどりの想いがあるわけで、並んだことが、いままさに奇跡。しかもその並び方は無理なく無駄なく、自然なある日の出来事のように。春に桜が咲いて散るように。

白い空間に、ゆっくり茂る植物。ベンチに座って現像を待つ人。荷物や道具は積み上げたコンテナの中。働いている人はオーバーオールのおじさん2人 (これから計画)。写真のことを、忘れてしまいそうな空気感。絵を描くアトリエのような、木々を売る植物屋のような、何がなんだか何屋さんなのか、よく分からないけれど、そういえばそこに「写真」があったね、という空間。

ああ、そうだったんだ。こうだったんだ。
ああ、これが4年前から見てみたかった風景だったんだ。

リフォームと模様替えが終わって、デスク跡地に積み上げたコンテナ。その上に座るオーバーオールのおじさんと(いや、お兄さんと)、じわじわほくそ笑む、4月1日の正午。わたしの居場所は、もうどこだって、大丈夫。嘘じゃないよ。

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