湖東にて

土曜日の正午。小旅行は時間ぴったりに京都の実家からはじまった。わたしは助手席でウトウト寝るという極楽スタイルで、父はハンドルを握り、母は我が息子のお世話をしてくれていた。名神高速からさざなみ街道を通って約1時間半でお宿に到着して、時間ぴったりに企画人の我が妹とも合流。さて、その妹のする事はいちいち”しっかり”していて、通してもらったお部屋はデラックススイートだった。自宅よりはるかに広いのだ。その上、何じゃこれはという什器がそびえたっていた。極めつけに窓の外は一面琵琶湖。そんな空間を息子はいきなり裸足で満喫していた。

今回は妹のお仕事を覗かせてもらうというのも一つの目的。伺ったのはクラブハリエの新しいパン専門店「ジュブリルタン」。企画段階からオープンまであらゆる部分に関わったプロジェクトの一つだそうだ。さざなみ街道沿いに現れた白い壁と芝生と薪のある大きな建物と大きな駐車場。パン屋というからもっとこじんまりとしているのかと思いきや、何じゃこりゃってなくらいの敷地。さすがだ。父はおしゃれなサクサクパンが大好きなので一番にトレーを持ってみんなの分を選び、母は息子の抱っこを担当してくれていて、わたしは煙突やら石釜やらディスプレー台なんかを見て回っていた。一つ一つ妹の説明を聞きながらそのお値段などにも驚き続けた。ゆるやかにカーブする建物のライン、1階のテラスから2階デッキ、そしてカフェ&バールへと続く導線は琵琶湖の風を感じる完璧さだった。さっそくできたてのサクサクパンと、噂のトップレベルのバリスタさんが淹れるコーヒーとともにデッキへ。10月からの新商品という「かぼちゃのパンプディング」は甘過ぎずほどよい口溶けで1歳3ケ月の息子も静かに味わっていた。ジュブリルタンとはフランス語で「時間を忘れる」という意味。確かに琵琶湖の風を感じていると、時間どころか場所さえも忘れてしまいそうな不思議なトリップ感のある新しいカタチのパン屋さんだった。

夕食はお宿のレストランでディナーコースを用意してくれていた。息子にはレトルトの離乳食を用意していたのだが、いまいち好みではないようで、大人のものから慎重に取り分けする方向でまとまった。意外にもヒットしたのがグリッシーニ。クラッカーのような食感のスティック状の細長いイタリアのパン。それをひたすらかじってくれていたおかげで優雅にとまではいかないが久々にコース料理をおいしく楽しめたのだった。朝食は和食のお膳。これまた息子にはちょこちょことお野菜やお豆腐を中心に取り分けていると十分満足して、ご丁寧にも配膳係の方に頭を下げて愛想を振りまいていた。

それから伺ったのは近江八幡の日牟禮(ひむれ)ヴィレッジ。たねやとクラブハリエ。妹のナビゲーションで洋と和のお菓子の世界を行き交ってきた。中でもお昼を食べに入った「日牟禮茶屋」は特によかった。広々とした2階のお座敷が空くのを待って、「せいろ蒸し膳」や「季節のうどん」「バームクーヘン豚の生姜焼膳」などを頼んだ。おだしが抜群。そして息子用に出してくださった湯のみや取り皿がよくあるプラスチック製ではなく陶器というのも素敵。最初と最後には小さな和菓子が添えられてきてかなり癒された。食欲の秋、食べまくりの湖東の小旅行の心地よい締めとなった。1発も泣かずグズらずだった息子。お腹をパンパンに膨れ上がらせて、満を持して喜びの雄叫びを上げていた。それはそれは大きく「ダッダッダッダッダーーー!」と。

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