サンダーバードに揺られて

ただいま1歳7ケ月の息子と二人、京都の実家にて休暇中。夫は一人、自宅の模様替えを担当中。寝室を移動して、その部屋を本とレコードの空間にしたり、リビングで一年半使いつづけたベビーベッドを解体したり、ちょっとしたことだけれどなかなか踏ん切りのつかなかった事をやってみている。

踏ん切りのつかなかった事といえば、息子連れで大阪から京都に帰る電車もそのひとつ。今までは夫運転の車でゆっくり帰ってきていたが、今回は初めて電車で息子と二人で移動することになった。普通ならなんてことない距離なのかもしれないのだけれど、わたしにはもう宇宙に飛び立つかくらいの勢いなのだ。阪急なのかJRなのか、考えまくって、それで結局、サンダーバードで帰ってきたのだった。金沢行きのあの特急列車。大阪駅のみどりの窓口でしどろもどろ指定席を取って、かといって速いわけでもなく、新快速と同じ時間かけて。なんて素敵なんだろう。何も気にしなくていい、大満足の移動だった。

そのサンダーバードに乗りながら、窓の外に浮かんできたのは昨年11月27日土曜日の夕暮れのことから。

3人で中之島にフォトアトリエを構えて初めてのイベント「1st window」は、肋骨を折りながら、薬で熱を下げながら、それでもなぜか元気に開催することができた。FLAT-FIELDの豚汁「フラジール」も振る舞うことができた。築34年のエレベータもない古いビルヂングにたくさん集まってくれたお客さん。壁から窓へ、映っては消え映っては消えていくスライド写真。そして一緒にこの2年を歩んできた仲間2人の後ろ姿を眺めていたら、言葉にならないくらいほっとした。ほっとしてしまったのだ。

入院はその後、約半月続いた。

1ヶ月以上続いた不明熱の原因を見つけるための検査は1週間。一体全体何なんだろう。と日が経つにつれて不安に襲われてきた。点滴の副作用もきつかった。息子の抱っこさえもできなかった。布団に潜り込みながらメソメソしていたら、毎朝毎夕と回診に来てくれる担当医や親切な看護士の方、大好きな家族や友人たち、保育園のお母さんや先生からも励ましてもらった。

原因はそれから約2週間かけて確定した。
それは珍しい4つの感染症だった。

異常なくらいの免疫低下。普通にしていたら感染しないようなものまで。それらの感染症から重症肺炎を起こしていた。レントゲンに写りにくいものや、感染から発症まで数週間潜伏するものなど、やっかいだらけだった。

退院の日、家に帰ったわたしを見た息子はわたしのずぼんの裾をピっと引っ張って、一つ「かぁか」とささやいた。その瞬間、これからの生き方暮らし方はしっかり決まったのだった。

サンダーバードに揺られながら、この大きな変わり目と息子のその背中をまたもう一度ぎゅっとした。

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