母さんたちの悩ましい季節

息子がまだ豆粒くらいのサイズでお腹の中にいた頃のこと。公園の横を散歩していると、その前をある保育園の園児3名と先生が何だかウキウキ楽しそうに手をつないで歩いていた。ゆっくりゆっくり進む彼らをぼーっと眺めていたら、1人がころんで泣き出した。すると回りの園児たちが「大丈夫?」「○○ちゃんがんばれ〜!」「よしよし。」とみんなでわっしょいわっしょい応援していて、先生はものすごい笑顔。そうしてまた歩きはじめた彼らは、こんどは1人が道端に咲いていた花を見つけた。それをまたみんなで「綺麗だねぇ。」「かわいいねぇ。」とちょちょくばって(しゃがんで)観察していた。それを先生はまたものすごい笑顔で見守られていた。美しかった。

その保育園に、息子は通っている。
生後9ケ月から、もうすぐ1年。

入所が決まったのは2010年の2月のこと。あの一連の時期は、心臓がギクっとなるくらい緊張していた。区役所に提出する入所申請書類をまとめている時は、離れる寂しさと働くことへの期待と不安がごちゃまぜだった。その上、今住んでいる大阪の認可保育園はまだまだ少なく、待機児童数は当時600人とか一時期は1300人とか、もうよく分からない情報が錯綜していた。だいたいこのあたりの0歳児の受け入れは一つの園に対して10人程度。1歳児クラスなんて持ち上がりのため2人とか3人になるらしく、「待機児童」というのが全く他人ごとじゃない状況だった。だから第一希望で決まったことは、とても嬉しく大切に受け止めた。

一方、今年もやっぱりこの待機問題を目の当たりにされている働く母さんの声をよく聞く。特に自営業やフリーランスで働く母さんたちは、厳しい闘いとなっている。辛い。今もなお全く他人ごとじゃないし、ウキウキした気分だけでの進級でもない。

入園当初の息子はそれはそれはたくさんの病気をして、胃腸炎類はわたしや夫も地獄の苦しみを味わったこともあったけれど、3ケ月もすればそれは落ち着いたものだった。しかし、預けれたヤッホー万事OKということでもなく、それはそれでまた違う闘いの幕開けなのだ。働くのだからもちろんものすごく忙しい。正直言って、どっぷり疲れている母さんたちもいっぱいいる(入院までしていたわたしが言うのもアレですが)。預けたい預けられない、働きたい働けない。どんな状況であれ、2月3月はそうした母たちの悩ましい季節のピークでもあるのだ。

だからこそ、わたしにとってはこうした環境の中での新しい出会いというのが何とも深い。

息子には園でも気の合う友ができた。七夕生まれのkouちゃんもまた陽気な1歳8ケ月の男の子。生まれた時期も身体のサイズもだいたい同じの二人は何かとちょうどいい感じのようだ。二人はいつも何だかウキウキしながら、何だかよく分からない言葉でおしゃべりして、音楽がなると一緒にステップを踏む。特に息子はkouちゃんにぞっこんで、ちょっとうっとうしいくらいのようだ。そうした行動やしぐさを先生や母さんたちと分かち合って笑っている時が、また一つの栄養剤になっているのかもしれない。療養中に頂いた京都の「かねいち」さんの「はちみつ生姜湯」を飲みながら、感慨にふけっている。

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