桜の咲く頃

わたしは桜の季節は、「感じる」だけで十分。いわゆる”お花見”という公園などで繰り広げられる宴会スタイルは好みではない。どう見ても、美しくない。桜の木の下で濛々と立ちこめるバーベキューの煙やにおいは、残念しきり。それでも、あの桜たちはよく耐えてくれているなぁと、靭公園などでは毎年よく思ってしまう。この時期は子供も遊ばせにくいので、週末は淀川の河川敷で、電車の往来を眺めたり、少年野球の風景を眺めたりしていた。そこに時々飛んでくる桜の花びらくらいが本当にちょうどよかった。

桜の季節は、夫34歳の誕生日も。公園のブランコではお尻が入らなかったり、なぜか毎年誕生日にほっとして熱を出したり、2年越しにKORGという楽器メーカーの「micro SAMPLER」を手にいれニヤけていたりしていた(左の写真/マイク付きの鍵盤にいろんな機能がついて録音ができる)。一体何をサンプリングするんだろうか。2LDKの我が家の2のうちの一つはめったに登場しないLPレコードとターンテーブルだらけで、あれもこれからどうするんだろう。と思いつつも、2年も欲しいものならとプレゼントすることにしたのだった。その日、届けてくれた宅急便屋のお兄さん。「楽器見るとドキドキしますわぁ!僕はこの二つ前の機種持ってますねん!これはマイクの性能が良過ぎて、雑音拾ってしまいますからね!気をつけてくださいね!ひゃひゃひゃ!」と言い放って行かれた。

出会って10年。人と暮らすと時々変な事に遭遇する。

お花見のうるさいのは苦手だけれど、一緒に暮らす人々の趣味にまつわる音響は、そういえば昔からあまり気にならなかった。夫の前には妹がそうだったから。ジャニーズからテクノ、フレンチポップに環境音楽まで。姉妹部屋ではあらゆる音が右から左へ、通過していっていた。こちらが受験だろうが何だろうが。妹のカナダ留学時代(2000年頃)には突然、「ラジオでDJすることになったから、レコード送って!」と連絡があり、当時京都のレコードカルチャーを引っ張っていた一つ「ZESTレコード京都店」などに、右も左も分からず言われたものを買いに行ったりしていた。FPMにピチカートファイブなんてのもカナダでは当時貴重で気に入られていたようだ。ただただ趣味に寛容な母も一生懸命なので、例え空輸便が8万(!)になろうが、きっちり揃えて送っていたのが今や平野家の伝説となっている。

さて、あの頃のあのレコードも、あれからどうなっているのだろうか。
趣味というもの、桜の花のごとし、かな。

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